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This blog is Written by 和水,Template by ねんまく,Photo by JOURNEY WITHIN,Powered by 忍者ブログ.

ここは、株式会社トミーウォーカーのシルバーレインで活動しているキャラ『桐嶋夜雲』のブログです。
心当たりのない方は回れ右で脱出をお願いします。

※ここに掲載されるイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の
世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注した和水に、著作権は各クリエーター様に、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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 珍しい事があるものだ。
 と、桐嶋玲人が目を瞬かせたのは、仕事を片付けて一息つこうと自室に引き上げてきた時だった。
 日付が変わる境界線という時間帯にも関わらず、夜雲の離れから賑々しい嬌声が聞こえてきている。
 常ならぬ出来事だ。
 ああみえて、夜雲は騒々しさをあまり好まない。
 夜雲の存在を隠していた頃は勿論、明らかにした後になっても、玲人の自室から見える離れは、とてもあの年代の子供が住んでいるとは思えぬほどの静寂に包まれていた。

 玲人がふと離れに足を向ける。
 己以外に、あの離れを訪れる者は ── しかも、女だ ── どんな人間なのか。
 その訪れは、夜雲を大学へ放り込んでまで望んだ変化の現れなのか。
 非常に、興味深かった。


 女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、夜雲の部屋を占拠した女性三人は恐ろしい勢いで話し込んでいた。
 しかも、熱気が尋常ではない。

「クロ、クロ。次はこっちを合わせて!」
「綾子姐さん、そのチョイス渋いわぁ。タローちゃんには早いでしょう?」
「大丈夫じゃないかしら、真希さん。アキくんなら、似合うと思うわ」
「そうよね、和枝ちゃん。クロなら、これくらいは着れるわね」

 玲人の期待に反して、夜雲の部屋に陣取っていたのは玲人が良く見知った三人だったが、これほど熱狂しているのを見た事はない。
 何しろ、玲人が部屋のドアを開けた事にも気付かないのである。
 部屋中に広げたスーツにシャツ、靴やらサングラスやら時計やらを、忙しなく手にとっては戻していく。
 当の夜雲はといえば、三人の真ん中で目を白黒させて、着せ替え人形よろしく突っ立っていた。

「いったい、何の騒ぎなんだ?」

 呆れたような玲人の声に、返ってきた反応は実に対照的だった。

 夜雲は、プライドもへったくれもなく助けを求めて玲人の背後に回り込み。
 女性三人は、一瞬で熱を抑えて姿勢を正し、床に控えた。

 しんと静まる中で、一番初めに声を発したのは和装の女性である。

「八代目…お騒がせして、申し訳ありません」
「気にするな。ただ、こんなにはしゃぐのは珍しいじゃないか、綾子?」

 綾子、と呼ばれた和装の女性は、四十路を越えてなお三十前半の若さを保つ美貌の女性だった。
 玲人の言葉にも、然して動じる風もなく隣に控えた女性に流し目をくれる。

「あら…着せ替え遊びに熱中しない女はいませんわ。ねぇ、和枝ちゃん」
「えぇ。しかもお相手は、見栄えの良い男の子、となれば…ね、真希さん」
「そうですとも。張り切らずにはおられません!」

 綾子に応えた和枝という女性も、和枝から引き継いだ真希という女性も、最後は綾子とともに夜雲を見詰めた。
 玲人の陰で苦手のネクタイを漸く外し終えた夜雲は、女性陣の言葉に盛大に呻く。

「そりゃないよ、姐さん達…。ちょっと服がおかしかないかみてくれって言ったダケなのに…」

 この三人の女性は、桐嶋組を構成する下部組織の所謂「姐さん」だ。
 その中でも、綾子は桐嶋組若頭である坂上組の姐で、八代目が独身の為いまだに姐が存在しない桐嶋組にあって組に関わる女性たちを束ねる存在でもある。
 和枝も真希も、綾子の腹心と言っていい存在で、そんな女傑三人に囲まれては、夜雲の抵抗など無いに等しい。

「いいかい、クロ。女ぁ落とすには、見た目でガツンとかまさないと!」
「しみったれた格好だと、女にナメられちまうんだからね、タローちゃん」
「そうよ、アキくん。最初のデートが肝心なの」

 三人三様の呼び名だが、どれも全て夜雲を指している。
 ほんの3・4年前まで戸籍がなかった夜雲は、決まった名前も実はなかった。桐嶋家に子供は夜雲しかいなかったから、皆がそれぞれ好き勝手に名付けて呼んでいたのだ。
 そして、正式に名が決まった今でもなお、以前の名で呼んでいる人たちが多い。
 特に女性たちは、その傾向が強かった。
 殆どの男衆が、玲人に倣って夜雲と呼ぶのを尻目に、自分が付けた愛着ある名前で呼び続けている。
 夜雲自身が、どんな名前で呼ばれようとも返答するものだから、千差万別な呼び名の横行が止まる訳もなかった。

「なんだ、お前。デートなんてするのか?」
「…そんなんじゃねぇって……」

 事の次第が飲み込めた玲人が、ぐんなりと応じる夜雲に面白そうな視線を向ける。
 上質のダークスーツに包まれた今の夜雲は、確かにチンピラや下っ端ヤクザには間違っても見えない。普段のそれなりに学生に見える格好とも違って、明確に玄人の空気を漂わせる出で立ちは、飄々とした夜雲の雰囲気と相まって、妙な危うさを形成していた。
 迂闊に触れたら火傷をする、それが分かっているのに手を伸ばしたくなる、そんな危うさだ。
 玄人女性ならまず放ってはおかない、上出来な仕上がりであろう。

「流石に、綾子たちの見立てだな。いい出来じゃないか」
「ありがとうございます」
「じゃ、コレで決定しちゃっていいよな、玲人」
「いいんじゃないか」
「やった!姐さんたち、ありがとう!」

 玲人の言葉にガバッと跳ね起きた夜雲が、機会を逃してなるものか、と強引に着せ替え遊びに幕を降ろす。
 そして、ほんの少し意見を聞くだけのつもりだったのに、恐ろしい事態に発展してしまったと冷や汗を拭った夜雲に、何気なく玲人が問い掛けた。

「ところで、お相手はどこのお嬢さんだ?」

 ここまで気合を入れていく相手である。当然の質問だったのだが、意外にも綾子たちが身を乗り出してきた。どうやら、服を選ぶのに熱中して聞き損ねていたらしい。

「んー?葛原さんだよ。玲人も知ってるだろ、多祇の許婚」
「…何、だと?」
「あ、何もやましかないからな。ちゃんと多祇の了解もあるし」
「葛原、彬…か?」
「そうだよ。ナンかね、行ってみたいお店があるっていうから案内すんだよ」
「この阿呆めが…」
「んあ?」

 嬉々としてスーツを脱ぎかけていた夜雲が、玲人の溜息のような呟きを聞きとがめて振り返った。
 途端。
 じり、と、足が後ろへ下がる。

「な、何で、姐さんたち…」

 そんな怖い顔をしてるのか、とは声にならなかった。
 頼みの玲人は、夜雲の視線を振り切り、くるりと背を向けて綾子の肩に手を置いた。

「すまないな、綾子」
「いえ…ちゃんと確かめなかったアタシたちも悪いんですから…」

 何処へ行くんだ、という夜雲の問いにも、玲人は答えずに部屋を後にする。
 そんな玲人の背後から、綾子たちの怒声と夜雲の悲鳴が沸きあがった。

「この、馬鹿クロ!」
「痛ぇ!ナニすんだよ、綾子姐さん!」
「ほら、選び直すからスーツしまって、アキくん」
「何で!?これで良いって決めたじゃねぇか、和枝姐さん!」
「タローちゃん…堅気のお嬢さま相手にそんな服、合うわけないだろ」
「えぇ?!そりゃなくねぇ?真希姐さん!」
「グダグダ言ってないで、早くお脱ぎったら!」
「か、勘弁してくれよ~…」

 次の日。
 爽やかな堅気衆に見える服装を選定するまで明け方までかかったと、恨めしげに告げる夜雲に、自業自得、の言葉を贈った玲人である。
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