ここは、株式会社トミーウォーカーのシルバーレインで活動しているキャラ『桐嶋夜雲』のブログです。
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背中の温みが、いつもと違う。
風受けるスピードも、カーブでの傾きも、障害物を避ける丁寧さも。
何もかもが違うツーリングに、夜雲は初めてバイクに乗ったような気さえしていた。
風受けるスピードも、カーブでの傾きも、障害物を避ける丁寧さも。
何もかもが違うツーリングに、夜雲は初めてバイクに乗ったような気さえしていた。
このカーブを抜ければ、少し長めのストレートがある。
そう思うだけでアクセルをつい全開にしたくなる気持ちと、超が付くほどの安全と慎重を期す気持ちが、同じ所から同じくらいの強さでわき上がって夜雲は思わず笑い出したくなった。
どちらの気持ちも背に感じる温もりが原因なのだと分かるだけに、尚更くすぐったいような心持ちになるのかもしれない。
ストレートでは背中にぎゅーとしがみついても大丈夫、でも、カーブの時はベルトに掴まるように。
タンデムすると決まった時の注意事項は、そんなところ。
体重移動などは結梨ならすぐ身体で覚えそうだと判断した夜雲は、あとは服装の簡単な説明だけをして、手の位置を切り替える合図を取り決めた。
トン、と手を突く合図。
声は出しても聞こえないからという夜雲に、深く頷く結梨の姿が可愛く映っていた。
ストレートになって合図を送れば、慎重に手が移動して背中の熱が上がる。
冬の寒さと、不埒な楽しみを事前にバラした結果として、結梨の上半身はもこもこ仕様。不埒な楽しみは実現しなかったのだけれど、背中の熱と回された腕、それだけで幸せなのだから夜雲にとっては結果オーライであろう。
休憩を挟みながら着いた先は、紅葉まっさかりな秋の山。
本番が海辺だから、練習は山へ行くことにしたのだ。
「わぁ、綺麗…。ね、夜雲さん、凄く素敵」
「ホントだ。揃えて植えてるワケじゃないのに、色合いが綺麗って何か凄ぇ…」
降りてすぐ目に飛び込んできた光景に、二人で感嘆の声をあげる。
見惚れながらも、寒そうに手に息を吹きかける結梨を見た夜雲が、その手を取ってぎゅーと握って、ポケットに入れた。
「こっちのが温まるじゃない?」
「ん…本当ですね…温かい…」
繋いだ手から、全身に広がる熱。
その熱で心臓が痛いくらいなのも、伝わるだろうか。
伝わればいいのにと、ポケットから手を引き出して指先にキスを落とせば、バフッと音がしそうな位に赤くなった結梨に、声を上げて笑う。
「っ! 不意打ち…っ! そんなに、笑わなくても…」
「ご、ごめん。楽しくて」
じゃれ合い、はしゃぎながら進む遊歩道。
びっしりと路を埋める赤と黄の綾錦を踏み分けながら、澄んだ空気を胸に吸い込む。
結梨によって、一つ一つ色づいていく世界。
目に眩しい紅葉も、吸い込む空気の美味しさも、結梨がいなければ色褪せて夜雲の中には残らなかったものだ。
「あ、松ぼっくり!」
駆けだした結梨が、しゃがんで拾ったそれを、ぱちくりと夜雲が見つめて首を傾げた。
「…俺の知ってる松ぼっくりと違う…。そんな丸まっちかった?」
「ふふ、これもちゃんと松ぼっくりですよ。色々と種類があるんです」
ほら、と言わんばかりに次々と拾っては夜雲の掌に乗せられる松ぼっくりに感心しきりに見入る様子に、結梨が楽しそうに笑う。
「ね、夜雲さん。持ち帰って、ツリーに飾りませんか?」
「松ぼっくりを?」
「コロコロして、可愛いと思いません?」
「…ん、そーだね。よし、それじゃあ、もう少し拾おうよ」
楽しみの種を、目一杯袋に詰め込んで。
慣れない安全運転で、帰り道を飛ばそう。
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